50. 黄金のアデーレ
50, 黄金のアデーレ 名画の帰還(2015年アメリカ、イギリス)




監督:サイモン・カーティス
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
音楽:マーティン・フィップス
マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)
ランドル・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)
フベルトウス・チェルニン(ダニエル・ブリュール)
あらすじ

この映画のテーマになっているクリムトのこの絵画や「接吻」はどこかで何度か見てはいたが、このようなエピソードがあったことは全く知らなかった。映画はドイツのオーストリア併合からユダヤ人迫害の歴史を振り返りながら、マリアがどのように「黄金のアデーレ」と関わってきたか、そうしてアメリカの国民として、オーストリア政府を相手取ってその絵をどのようにして取り戻したかを描いている。
まだ戦後70年なのだから当然といえば当然なのだが、難を逃れてアメリカに渡った時のマリアが20の時というから、実際にナチスに虐げられたユダヤ人がまだアメリカに大勢いるだろうことは想像に難くない。ユダヤ人根絶まで目論んだ恐ろしいホロコーストが100年も経っていない、つい最近に起こっていたというのを改めて感じると人間の恐ろしさを感じざるを得ないし、人の命の軽さも去ることながら、徴収した財産を私物化していたナチストップ等の人間性の喪失も人の心の弱さを改めて感じる。
1998年に82歳のマリアは姉のルイーゼが件の絵画の返還を求めようとしていたことを、彼女の死を契機に知ることになる。ナチスに徴収された伯母夫婦の絵画を取り戻そうと考えるのだが、オーストリアでの裁判には多額の預託金が掛かることやオーストリア政府は国立ベルベデーレ美術館所蔵はアデーレの遺言であることを根拠に返還を拒否していて裁判は困難を極めた。マリアと新米弁護士ランドルの法廷闘争が克明に描かれているのだが、二人の共闘や葛藤、お互いの意気消沈に怒ったり励ましあったりが心温まる物語として描かれている。ある種の謎解きで、遺言の論拠を打ち破ることによって奪還するという決着を見るまで実に8年を費やしている。


ヒトラーは美大を受験して失敗していて、彼が合格していたらヨーロッパはどうなっていただろうとか、ランドルの祖父が作曲家のシェーンベルクで、マリアと訪れたウィーンで彼の曲を聴いて意を新たにするエピソードを入れたあたりはなかなか洒落ていた。アデーレ夫婦はかなり裕福で多くの芸術家のパトロンで彼らのサロンにはクリムト、マーラー、フロイト等が出入りしていたという。しかし、ドイツのオーストリア併合という歴史をよく知らない私は親ナチスと反ナチスにユダヤ人がどう絡んでいたのかは全くわからない。この辺りをいろいろ調べていたら面白いブログ記事を見つけた。そういえば、同じ時期に題材をとったアメリカ映画「サウンド・オブ・ミュージック」だが、オーストリアではほとんど上映されることはないらしい。この記事には、この返還裁判にも触れているばかりか、当時から現在に至るオーストリアのことを判りやすく書いていると思った。→ こちらをクリック。



